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【認知症をもっと知ろう】

第5回  ものわすれ検査

今回はものわすれ検査についてのお話しです

もの忘れ検査で多く使われているものに、改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)というものがあります。もともとは認知症をスクリーニングするためにわが国で開発された簡便な質問式の検査法です。つまり、対象者の日常生活の様子が十分に把握できない時、単身者である時、高齢者世帯で情報提供者となるべき配偶者が虚弱であったりする時、認知症の疑いがあるかどうかの目安をつけることが本来の用い方です。HDS-Rは年齢、時間の見当識、場所の見当識、単語の再生と遅延再生、計算、数字の逆唱、物品の視覚記銘、言語の流暢性の9つの設問から構成されています。対象者の生年月日のみ事前にわかれば周囲の人や家族からの情報がなくとも施行可能です。すべての質問式のスケールに共通しますが、HDS-Rは観察式の検査法とは異なり、対象者の協力が不可欠であり、また高度の視聴覚障害がある時には施行できません。被検者の意欲や集中力が十分でない時やうつ状態では実際よりも得点が低くなる傾向があります。
施行時間は5分程度ですから、短時間で検査ができます。この検査の最高得点は30点で、スクリーニング検査として用いる場合には20点以下を認知症、21点以上を非認知症とした場合に最も高い弁別性が得られます。
このもの忘れ検査を実施するときには可能な限り周囲からの騒音などがない静かな場所で行います。居宅でテレビなどがつけられている時には少なくとも音声がでないようにし、薄暗い場所で実施することはしません。
それでは、HDS-Rの質問についてご紹介します。

質問1:年齢
満年齢が正確に言えれば1点を与え、2年までの誤差は正答とみなす。被検者が正答できない時に、家族が脇から答えを言ったりしないように注意をしておく。

質問2:日時の見当識
「今日は何年の何月何日ですか?」と問う。続けて聞くのではなく、「今日は何月何日ですか?」と聞き、「何曜日でしょう?」「今年は何年ですか?」とゆっくり別々に聞いてもよい。年・月・日・曜日それぞれの正答に対して各1点を与える。年については西暦でも正解である。年齢の質問と同様に被検者が正答できない時に、家族が脇から答えを言ったりしないように注意をしておく。

質問3:場所の見当識
「私たちがいま居るところはどこですか?」と問う。被検者が自発的に答えられれば2点を与える。病院名や施設名、住所などが言えなくてもよく、現在居る場所がどういう場所なのか本質的に捉えられていればよい。もし、正答がなかった場合には約5秒おいてから「ここは病院ですか?家ですか?施設ですか?」と問い、正しく選択できれば1点を与える。

質問4:3つの言葉の記銘
「これから言う3つの言葉を言ってみて下さい。あとでまた聞きますのでよく覚えておいて下さい」と教示する。3つの言葉はゆっくり区切って発音し、3つ言い終わった時に繰り返して言ってもらう。使用する言葉は2系統あるため、いずれか1つの系列を選択して用いる。1つの言葉に対して各1点を与える。もし正解がでない場合、正答の答えを採点した後に正しい答えを教え、覚えてもらう。もし3回以上言っても覚えられない場合にはそこで打ち切り、質問7の「言葉の遅延再生」の項目から覚えられなかった言葉を除外する。質問4の3つの言葉の直後再生ができない場合には質問7の遅延再生は出来ないことが多い。

質問5:計算
「100引く7はいくつですか?」「それからまた7を引くといくつになるでしょう?」と問う。「93から7を引くと?」というように検査者が最初の引き算の答えを繰り返して言ってはならない。各正答に対して1点を与えるが、最初の引き算の答えが誤りである場合にはそこで打ち切り、2つめの引き算は行わない。質問5は健常者では比較的教育歴による影響を受けやすい。

質問6:数字の逆唱
「私がこれから言う数字を逆から言って下さい」と教示する。数字は続けて言うのでなく、ゆっくりと約1秒の間隔をおいて提示し、言い終わったところで逆から言ってもらう。正解に対して各1点を与えるが、3桁の逆唱ができなかった時はそこで打ち切る。質問5と質問6は質問4をしたあと質問7をするため注意を他に向けるための課題(干渉課題)であるため、特に質問4〜7までは必ずこの順番で行う。

質問7:3つの言葉の遅延再生
「さきほど覚えてもらった言葉をもういちど言ってみて下さい」と教示する。3つの言葉のなかで自発的に答えられた言葉に対して各2点を与える。もし答えられない言葉があった場合には、少し間隔をおいてからヒントを与え、正答すれば1点を与える。例えば系列1で「桜」と「電車」が想起できなかった場合は「1つは植物でしたね」というヒントを与え、正答できれば1点を与える。その後に「もう1つは乗り物がありましたね」とヒントを与える。ヒントは被検者の反応をみながら1つずつ提示するようにし、「植物と乗り物がありましたね」というように続けてヒントをだしてはならない。

質問8:5つの物品記銘
あらかじめ用意した5つの物品を1つずつ名前を言いながら並べて見せ、よく覚えるように教示する。次にそれらを隠して「思い出す順番はバラバラでもいいですが、今ここに何がありましたか?」と尋ねる。物品に特に指定はないが、「時計」「鍵」「ペン」「硬貨」「スプーン」など相互に無関係な物品を用いる。「ボールペン」「鉛筆」「はさみ」など関連する物品は用いない。各正答に対してそれぞれ1点を与える。

質問9:野菜の名前:言語の流暢性
「知っている野菜の名前をできるだけたくさん言って下さい」と教示する。具体的な野菜の名前を検査用紙の記入欄に記入し、重複したものは採点しない。この質問は言語の流暢さをみるためのものであるため、途中で言葉に詰まり約10秒待っても次の野菜の名前が出てこない場合にはそこで打ち切る。採点は5個までは0点であり、以後、6個=1点、7個=2点、8個=3点、9個=4点、10個=5点とする。

以上が、HDS-Rの質問です。
俳優の渡辺謙さんが主演した「明日の記憶」
という映画をご覧になった方は覚えていらっしゃるかもしれませんが、主治医が認知症検査の場面でこのHDS-Rを使用していました。
今回はこのあたりで。
では次回をお楽しみに。



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